力強くスケールの大きな落ち着いた風格、フィンランドが生んだ偉大な芸術家
ノラスの雄大な音楽性は、故国の大地に培われたものである。彼はシベリウス・アカデミーで学んだ後、パリ音楽院にてトルトゥリエに師事。66年チャイコフスキー国際音楽コンクールで第2位を受賞、フィンランドが誇る屈指のチェリストである。フィンランディアレーベルよりリリースされているCDはブラームスからショスタコーヴィチ、ペンデレツキまで名盤も数多い。特筆すべきは、ショスタコーヴィチ、ペンデレツキ、トルトゥリエ等と直に交流を持っていたという点であり、彼の演奏スタイルには作曲家から直接影響を受けている部分が多い。個人としての演奏活動の他にも、アシュケナージ、イ・ムジチ合奏団等を招いて毎年行われているナーンターリ音楽祭の芸術監督を創立当初から務めている。また70年より長くシベリウス・アカデミーの教授を務めており、世界に活躍する音楽家を育てている。大阪で行われている大阪国際室内楽コンクールには審査員として毎回招待されており、マスタークラスも数多い。彼の銘器グランチーノから紡ぎだされる低音の響きは深く心を抉り、伸びやかに、時に甘く歌われる高音は吟遊詩人のように雄弁に曲を物語る。現代を代表する演奏家の一人として、今最も注目を集めている。