【Wayne Marshall】
マーシャルは幼少期から音楽に触れ、3歳からピアノに慣れ親しみ、その数年後には本格的なレッスンを始めた。
1971〜1979年、マンチェスターのチェサムズ音楽学校で学んだ。その後、奨学金を得てロンドンの王立音楽大学へ進学し、ウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂のオルガン奨学生も務めた。さらに、1983〜1984年にはウィーン国立音楽大学大学院へと進んだ。
このような音楽界への進出によって教会音楽やジャズを含む多様なジャンルでの経験を積みつつ、彼はすぐさまオルガンとピアノの独奏者としてプロになることを決意した。最初のレコーディングは遡ること1990年、コヴェントリー大聖堂のオルガンを使用しEMIよりリリースされた。
また、後に指揮者として世界の有名なオーケストラと共演する道となる足掛かりを見つけたのもこの時期である。こうして、ソリストとして演奏するのと同様に指揮台の上で指揮をしたり監督したりすることにも慣れてきた。まさに2つの才能を持つ人物、いわば1つの遺産のような人物となったのである。
これまでにたくさんのレコードに出演し、ワシントン、ダラス、モントリオール、パリ(オペラ=コミック座)、ローマ、ドレスデン(ゼンパー・オーパー)などの著名な歌劇場で指揮をした。
2016年には、ロイヤル・スコティッシュ管、台北市立響、マレーシア・フィルに客演指揮者として招かれ、BBCプロムス(ロイヤル・アルバート・ホール)のTen Piecesでは、オルガン奏者として演奏した。
BBCプロムスでは2016年以前にもたくさん演奏し、2014年のバレンボイム・プロムスではゲストプレゼンターの1人として出演した。
彼の功績はこれに止まらない。1998年、BBCミュージック・マガジン・オブ・イヤーに選ばれ、2004年にはボーンマス大学から名誉博士号を授与された。2010年王立音楽大学のフェローになり、2016年には彼の音楽活動を称え、名誉あるゴールデン・ジュビリー・アワードを受賞した。
レコーディングで特筆すべき点は、ピアノアルバム《A Gershwin Songbook & improvisations 》がドイツのエコー賞を受賞したことである。
このような多忙なスケジュールが示す通り、マーシャルは自らのキャリアに甘んじることはない。引く手数多の彼は、特にケルンWDR響の首席客演指揮者として活躍し、さらにライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、チェコ・フィル、ウィーン響などとも共演した。
もっとも期待されていたプロジェクトの一つとして、2018年にはパリ管によるレナード・バーンスタインのミサ曲の指揮があった。バーンスタインの音楽の解釈はマーシャルの強みであり、それゆえ演奏はとても注目されていた。
このような指揮活動に加え、コンサート・オルガニストとしても世界を巡り、モスクワ国際音楽ホール、ロッテ・コンサートホール(韓国)、デーヴィス・シンフォニーホール(カリフォルニア)で演奏した。